社会福祉学
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わが国における人工生殖と子の福祉に関する歴史的考察 : 「人工授精子」誕生の時代(1949~1978年)に着目して
宮嶋 淳
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2008 年 49 巻 1 号 p. 75-86

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抄録

本稿は,非配偶者間人工授精が「社会的虐待」と呼び得る構造の下に行われてきたという筆者らの仮説の妥当性を歴史的な視点から論証するため,「人工授精子」が誕生した時代(1949〜1978年)における論争に着目して探索を試みた.その結果,この時代における人工生殖に関する論点は,(1)優生思想,(2)社会的道徳的認知,(3)家族・私人間関係の3つに整理することができた.また,同時代における論争は,人工生殖の是非論からリスク論に変化していることが明らかになった.さらに,同時代は,「子」を人工授精の当事者とすることからも排除し,「人工授精子」の存在を社会化しなかった時代だったと認めうるものだったことが明らかになった.

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© 2008 一般社団法人 日本社会福祉学会
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