社会福祉学
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「劣等処遇」再考 : Benthamの見解に着目して
野田 博也
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2008 年 49 巻 2 号 p. 17-29

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抄録

本稿の目的は,「劣等処遇」に関連するBenthamの見解を踏まえ,その見解から通説となった「劣等処遇」を再考することである.Benthamは,功利原理を実現するために生存の確保を重要な目的とし,その目的を果たすために法による救済の必要性を主張していた.1834年救貧法王立委員会報告に規定された「劣等処遇」は,法による救済の必要性と表裏一体の原則として示された,救済の制約に関わる原則であった.また,その制約の原則を実行するために,Benthamは生活に必要な財物と快適性を基本的な視点として提示していた.改めて1834年報告をみると,Benthamの見解(その言い回しや論理)と類似する記述は同報告のなかにも確認できた.そして,「劣等処遇」を命名したWebb夫妻の見解とBenthamの見解を比較することによって,給付水準と救済方法の両面に共通点と相違点があることを明らかにし,もうひとつの「劣等処遇」を指摘した.

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© 2008 一般社団法人 日本社会福祉学会
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