抄録
本研究の目的は,(1)市民参加型の在宅緩和ケア体制を導入した組織における長期的な方針および体制の変化がボランティアに与えた影響と,(2)市民参加型の在宅緩和ケア体制が組織にもたらす有益性を明らかにすることである.市民参加型の在宅緩和ケア体制を導入するA組織で,インタビュー調査と参与観察を実施した.その結果,A組織の3期にわたる方針や体制の変化は,ボランティア参加者や活動の特性に影響を与え,活動は地域に根差したものへと変容したことが明らかになった.また,市民参加型の在宅緩和ケア体制は,ソーシャル・キャピタルの特徴である「ネットワーク,互酬性の規範信頼」の生成を促していることが明らかになった.これは,在宅緩和ケアを実践するうえで重要な,地域と組織との相互作用をより円滑にするという有益性をA組織にもたらしたといえる.