2013 年 53 巻 4 号 p. 69-81
本稿は,日本においてこれまで研究されることがほとんどなかった里親家庭の実子に焦点をあて,里親家庭で里親(両親)や委託児童とともに生活する実子がどのような意識をもち生活を送ってきたかを明らかにすることを目的とした.里親家庭で生活したことのある成人に達した実子11人へのインタビュー調査を行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチにより分析を行った.その結果,実子は委託児童と中途の関係から生活が始まり,委託児童の措置の状況によりたびたび里親家庭の構成員の変化を経験する.里親家庭でのさまざまな経験は実子に大きな影響を与えるが,実子の存在は里親養育から見落とされる傾向が高いことが明らかになった.実子は里親家庭だけではなく学校や地域などの社会においても多様な葛藤をもちながら生活を送ることが示唆された.