ALSは終末期には呼吸筋麻痺で死亡と認識されてきたが,1980年代以降医療機器等の発展後,呼吸筋麻痺後を含め「新しいALS観」が提唱された.しかし現在も装着率は3割にとどまる.本研究は遺族に対し,生活構造論と生活の資源を用い,装着者(5例)と照合し,非装着者(13例)の病の経験と生活を調査した.結果から,(1)アイデンティティは社会制度の利用に影響を与える,(2)情報提供の適切な時期,量は個々の生活戦略により異なる,(3)アイデンティティの全面的崩壊はない,非装着・装着は生死を分かつ選択だが,呼吸筋麻痺を個別的に受け止めた結果の違いである,(4)資源の管理者役割への外部支援,特に男性介護者の経験不足と男性心理に対する支援がない,などが挙がった.当面の課題として,一定の社会制度の利用促進,情報保障,管理者役割支援が挙げられるが,これらを貫く生活の多様性を保障したうえでの生活の資源の標準化と介入のあり方に対する検討は残された課題である.
抄録全体を表示