社会福祉学
Online ISSN : 2424-2608
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「慈善事業」概念に関する考察
石井 洗二
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2014 年 55 巻 3 号 p. 1-11

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抄録

本稿は,19世紀の日本において慈善事業という語が用いられた社会的な文脈と,1950年代から慈善事業が歴史記述のための概念として用いられるようになった経緯を考察する.19世紀末に慈善の語はいくつかの文脈で用いられていた.そのようななか,近代国家として慈善事業の整備を必要と考える立場から1908年中央慈善協会が設立される.これを機に福祉実践は慈善,慈善事業の語によって語られることが一般化した.しかしその十数年後には,慈善事業は社会事業の前史として否定的に語られるようになった.そのような来歴に見られる二つの含意を踏まえて,1950年頃に吉田久一は,日本における慈善には「封建的慈恵性」と「近代性」という二つの性格が背負わされた,という慈善の「二重性」論を提起し,そのうえで慈善事業を歴史研究の概念として位置づけた.それは戦前の社会事業研究を継承しつつ,風早八十二らの議論を踏まえることであった.また,社会事業を社会福祉の前段階として説明しようとする風潮に抗する意図もあったと考えられる.

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© 2014 一般社団法人 日本社会福祉学会
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