社会福祉学
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国の福祉政策と自治体による施策の実施過程に関する研究 : 生活支援ハウスの設置をめぐって
越田 明子
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2014 年 55 巻 3 号 p. 12-28

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抄録

自治体独自の高齢者福祉政策について理解するために,小規模自治体が運営してきた生活支援ハウスの設置に関する国の政策的意図と自治体による設置判断の関係を明らかにした.国の意図は,生活支援ハウスに関する地域振興・過疎対策関係,老人福祉関係,介護保険関係の公文書から確認した.次にA県の生活支援ハウスを運営している30自治体計41施設の設置状況について継続的調査を行った.国の政策段階には,第I期のゴールドプランによる過疎地域における介護サービスの整備期,第II期の介護保険制度の受け皿期,第III期の地域の実情に応じた調整期の三つがあった.これに対する設置過程の検証から,以下が明らかになった.小規模自治体は,地域固有のニーズから施設を整備し,国の意図に沿わなかった.国が全国を対象とする一般的な政策意図によって制度を運営するのに対して,生活支援ハウスのような個別性の高い施策は,自治体特有の政策判断が働いていた.

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© 2014 一般社団法人 日本社会福祉学会
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