社会福祉学
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日本最初の盲人専用老人ホーム「慈母園」の設立過程
小西 律子
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2015 年 55 巻 4 号 p. 56-69

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抄録

由緒ある寺でありながら歴史に翻弄され荒れ果ててしまった壷阪寺.その再興を託されたのが,常盤勝憲である.僧侶として生きる自信がなかった常盤であったが,ふとしたことで良寛と出会う.そして良寛の「思いやりの言葉をかけるだけでも人を救うことができる」との信念とその実践に共感し,これこそが自分の生きる道だと確信する.壷阪寺の副住職となった常盤は,寺が古来より盲人にゆかりがあることに鑑み,盲人のための福祉事業を始めようとする.しかしそのためには資金が必要であり,当局の理解も必要であった.常盤は大阪近辺の会社を回り,厚生省にも出向いて盲人の置かれた境遇,寺と盲人との関係,盲人のための福祉事業の必要性を説き続けた.やがて常盤の心は通じ,経済界の協力を得て目標の寄進が集まった.また板山賢治との出会いにより,厚生省のお墨付きを得た.こうして生まれたのが,わが国最初の盲人専用老人ホームとなる慈母園である.

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© 2015 一般社団法人 日本社会福祉学会
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