社会福祉学
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1900年感化法の制定過程に関する社会政治的考察
北場 勉
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2015 年 56 巻 3 号 p. 1-13

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抄録

本論文は1900年感化法の成立過程を社会政治的視点から明らかにするものである.当時,立法化を要する三つの,課題があった.一つ目の課題は民法上の懲戒場を具体的に指定することであり,二つ目の課題は懲治人を他の犯罪者から分離することであり,三つ目の課題は不良少年を収養する場を創設することであった.官僚が三つ目の課題の重要性を理解したとき,監獄費国庫支弁が実現し,地方費に余裕が生まれた.このとき,三つの課題を解決するため,府県に感化院の設置を義務づける感化法が成立した.感化法は,刑事的性格と福祉的性格を合わせ持つ.不平等条約改訂により,締約国は治外法権を放棄し,日本は西洋式の法典を整備したが,一つ目の課題は法典整備の,二つ目の課題は監獄改良の一環であったものの,三つ目の課題はこのどちらでもない.府県立感化院の設置には窪田や渋沢の考えが,代用感化院制度の実現には民間感化院を支援しようとする考えが影響を与えた.

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© 2015 一般社団法人 日本社会福祉学会
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