2019 年 59 巻 4 号 p. 1-15
本稿では,本人の会に所属し,当事者運動をしている知的障害者のインタビュー調査をもとに,本人の会の経験が知的障害者の権利意識の醸成に与える影響について考察する.知的障害者は,【本人の会に参加するきっかけとなる活動】や【本人の会への参加】によって,それまでに経験した違和感や理不尽な経験は障害者差別であり,権利侵害であったと捉え直している.また,【本人の会への参加】をし活動を行うことは,〈自信の回復〉や,権利意識の醸成につながっている.本人の会の活動を通して,知的障害者は自分が置かれている現実を捉え直し,自分の権利を社会関係の中で実現しようという権利意識が生まれ,その権利意識を持つ当事者とのかかわりの中で,権利意識は伝達される.本人の会には,活動の積み重ねや仲間との出会いや他団体と連携するなかで権利意識が醸成され,さらに他者に伝えられていくという循環がある.