2021 年 62 巻 1 号 p. 52-68
市民後見人登録者が受任を躊躇(不安視)する現象がみられるなか,後見実施機関を監督人とする現任の市民後見人に,質問紙調査にて後見活動で感じた思いについて自由記述を求め,定性的コーディングによって分析し,後見活動の実際と課題を明らかにした.その結果,市民後見活動の実際と課題は《市民後見活動の現状》《市民後見活動の体制整備》《市民後見事業への展望》の3つの上位カテゴリーと【被後見人等に対する意思決定支援】【市民後見活動上の困難】【市民後見人をめぐる制度課題】【活動支援に関する要望】【市民後見事業への展望】の5つのサブカテゴリーが生成された.なかでも〈後見実施機関のサポート〉〈制度の周知・啓蒙〉〈後見報酬〉〈市民後見人のライフステージを考慮した支援〉〈市民後見人のプライバシーの保護〉で支援不足や制度への課題を感じていた.これらの課題は,市民後見事業への普及・促進に重要な示唆を示している.