2022 年 63 巻 2 号 p. 1-13
本稿の課題は,福祉縮減期における生活保護制度の福祉縮減がどのような論理により可能となったのかを,非難回避戦略を用いて検討することにある.1980年代には社会保障政策の縮減が進展したが,生活保護制度でも急激な福祉縮減が行われた.先行研究では,「第三次適正化」政策や,高率の国庫支出金の削減により福祉縮減が著しく進展したことを指摘しているが,なぜ,当該期において生活保護制度の縮減が行われたのかを理論的枠組みから検討は行われていない.新川敏光は,ウィーバーの非難回避戦略を再編成し,1985年の年金制度改革を分析した.この福祉縮減には非難回避戦略が巧みに活用されていた.加えて,生活保護制度における福祉縮減が,政策実施を担う地方自治体において,どのように展開されたのかを,北九州市を事例として解明を試みた.その結果,生活保護制度でも,非難回避戦略が用いられ,福祉縮減が行われたことをあきらかにした.