社会福祉学
Online ISSN : 2424-2608
Print ISSN : 0911-0232
63 巻, 2 号
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論文
  • 平 将志
    2022 年 63 巻 2 号 p. 1-13
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/10/13
    ジャーナル フリー

    本稿の課題は,福祉縮減期における生活保護制度の福祉縮減がどのような論理により可能となったのかを,非難回避戦略を用いて検討することにある.1980年代には社会保障政策の縮減が進展したが,生活保護制度でも急激な福祉縮減が行われた.先行研究では,「第三次適正化」政策や,高率の国庫支出金の削減により福祉縮減が著しく進展したことを指摘しているが,なぜ,当該期において生活保護制度の縮減が行われたのかを理論的枠組みから検討は行われていない.新川敏光は,ウィーバーの非難回避戦略を再編成し,1985年の年金制度改革を分析した.この福祉縮減には非難回避戦略が巧みに活用されていた.加えて,生活保護制度における福祉縮減が,政策実施を担う地方自治体において,どのように展開されたのかを,北九州市を事例として解明を試みた.その結果,生活保護制度でも,非難回避戦略が用いられ,福祉縮減が行われたことをあきらかにした.

  • 牧田 俊樹
    2022 年 63 巻 2 号 p. 14-27
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/10/13
    ジャーナル フリー

    「障害とは何か」という問いがある.しかし,その問いに一義的に答えることはできない.これを前提とし,本稿は,障害者の苦悩・苦痛の軽減・除去等の目的に役立つという意味での「有用性」の観点から,障害定義が,個別の事例で,目的に合わせ,例えそれが矛盾したとしても,複数選択するという,「障害定義の戦略的・実践的使用」が可能なのではないかと考える.そこで,本稿の目的は,この「障害定義の戦略的・実践的使用」の可能性を,予想されるさまざまな批判に応答しながら,議論の俎上に載せることである.結果,「障害定義の戦略的・実践的使用」を,議論の俎上に載せるということを文字通り解釈するならば,本稿の目的は達成されたと考える.そのうえで,「障害定義の戦略的・実践的使用」は,障害に関する事例ごとに目的が異なる以上,その達成のためには,大きな利点を有することを示唆することができた.

  • 西村 愛
    2022 年 63 巻 2 号 p. 28-40
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/10/13
    ジャーナル フリー

    本稿は,都外施設の資料の整理を通して,都外施設の議論で欠如していた点を明らかにし,今日の知的障害者の親亡きあと問題との関連の検討を目的とする.都外施設は,施設中心福祉の時代において親亡きあとの生活の場の役割を果たしてきた.しかし,地域福祉の時代に入り,知的障害者本人が東京都の生活を希望するものの,実現が難しい現状がある.

    本稿は,都外施設の問題は,脱施設を考慮に入れていなかったこと,親と知的障害のある子どもを分けたうえで対策を講じてきたこと,知的障害の特性を考慮に入れていないことが要因だと指摘した.これらの課題は,知的障害者の親亡きあと問題にも通じる.知的障害者の親亡きあと問題の解決には,親を当事者の1人として捉え,意思表明が難しい知的障害者本人を中心とした関係者同士が本人に関する情報共有をしたうえで,本人の好みや願いを模索していくことが知的障害者の親亡きあと問題の糸口になると結論付けた.

  • 大塚 桃子
    2022 年 63 巻 2 号 p. 41-55
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/10/13
    ジャーナル フリー

    本稿は,矯正施設を出所した障害者の支援に携わる地域生活定着支援センターのソーシャルワーカーが,対象者を支援するために,どのようなソーシャルワーク実践を展開しているのかを明らかにすることを目的とする.6県の地域生活定着支援センターの職員7名に対する半構造化インタビュー調査を実施した.分析の結果,33のコード化単位が生成され,12のカテゴリに整理された.これらを【対象者との直接的な関わり】,【矯正施設・保護観察所との連携】,【地域の関係機関との連携】という3つの場面に分けて分析を行った.その結果,地域生活定着支援センターのソーシャルワーク実践として,以下の3点の特徴が明らかとなった.第1に,普遍性と専門性が認められること,第2に,制限された時間や環境の中でアセスメントをし,出所後の地域生活に向けた支援を行う必要があること,第3に,様々な機関と多様な連携が求められていることである.

  • 鈴木 智子
    2022 年 63 巻 2 号 p. 56-69
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/10/13
    ジャーナル フリー

    本研究では,地域住民との連携・協働により社会資源を開発したソーシャルワーカーのプロフェッショナルコンピテンスを明らかにすることを目的として,この分野において実践経験を有する地域包括支援センターの社会福祉士にインタビュー調査を行った.質的データ分析法による分析の結果,実践過程にそって,20のコンピテンシーコード,8のカテゴリーが生成された.ソーシャルワーカーは,支援の限界を覚知しながらも課題の解決から目をそらさず,柔軟な視点で開発するべき社会資源を捉え,戦略を立て,実行,修正,評価していた.また,対話と情報共有により前向きな判断が下される場を醸成し,開発のための機動力あるベースキャンプをつくっていた.実践の過程を通じ,場面に応じて専門職としての態度を脱いで人としてかかわり,多様な主体とつながる一方,専門職としての実践力を発揮する『「専門職としての自己」の着脱』を繰り返していることがわかった.

調査報告
  • 岡部 茜
    2022 年 63 巻 2 号 p. 70-84
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/10/13
    ジャーナル フリー

    2000年代以降,若者の「生きづらさ」への注目がなされ,代表的なものとしては就労支援や居場所づくり,アウトリーチなどいくつかの若者支援が行われてきた.若者の困窮状況の一つとして居住問題もまた指摘されてきたが,従来の若者支援のなかで,居住に焦点を当てる支援はわずかである.公的な支援もなく,一部の民間団体が支援をしている状況であるが,その実態は明らかになっていない.この調査報告は,全国でどのような若者への居住支援が行われているのかを明らかにすることを目指す.本調査は,若者への居住支援を行っている団体職員にインタビュー調査を実施しており,本報告は2021年3月までにインタビューを完了した団体の調査をもとに作成している.調査から,2010年以降多様な背景から若者への居住支援が開始されたことが明らかになった.また,利用者負担額の分布や居住場所の提供形態,職員の配置,入居した際の利用規則などが整理された.

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