抄録
レーザー光による皮膚表面外科治療では,常にselective photothermolysisに基づいたthermal relaxation time(TRT)を考慮する必要がある。TRTより照射時間が長くなると,chromophoreに発生した熱の拡散により周囲の熱損傷が大きくなる。炭酸ガスレーザーではそのような危険度が大きく,蒸散組織周囲に必ず認められる蛋白変性層が厚いほど創傷治癒は遅れる。特に東洋人では創傷治癒遷延が2週間をこえると肥厚性瘢痕を形成することが多い。また,肉芽増殖が不十分にもかかわらず上皮化した,陥凹を伴う萎縮性瘢痕などにも注意を要する。今回は肥厚性瘢痕と萎縮性瘢痕に対し波長595nmのロングパルスダイレーザー(Vbeam®,Vbeam Perfecta®)を用い,パルス幅20~30msec,出力6J/cm2,cooling/delayを30/30ないし40/20とまったくの同条件下で治療した。肥厚性瘢痕は平低化し,萎縮性瘢痕の消失や軽減が観察された。さらに,肌理の出現などskin textureの改善が認められ,真皮浅層においてコラーゲンの再構築が行われたことが示唆された。