抄録
骨皮質など血流のない組織に直接植皮を行うことは困難であり,教科書的には髄質を露出させることで植皮術が可能とされている。しかし,広範囲の頭蓋骨露出創では,外板をすべて除去することで術中出血量が増加し,頭蓋骨の強度が低下する恐れがある。そこでわれわれは,広範囲な頭蓋骨露出創 3 例に対して,異なる方法で植皮術を行い,頭蓋骨への植皮法について検討した。症例 1 は切除範囲全域にわたって外板を除去し,板間層に直接植皮術を施行した。症例 2 は部分的に外板を温存し,人工真皮を用いて二期的に植皮術を施行した。症例 3 は外板に格子状の溝を掘り,人工真皮を用いて二期的に植皮術を施行した。以上 3 例の結果から,植皮の生着は板間層上よりも外板上のほうが良好であった。広範囲の頭蓋骨外板露出創に対しては,強度の面からも外板は可及的に温存し,人工真皮を用いた二期的な植皮術が有用であると考えられた。