保健医療社会福祉研究
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実践報告
医療ソーシャルワーカーが業務のなかで霧散させる感情としての「とまどい」に着目する臨床的有用性
―認知症高齢患者の家族支援を手掛かりに―
本岡 悟大西 次郎
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2022 年 30 巻 p. 65-75

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抄録

MSWは患者ないし家族の言動から自らの支援の至らなさを覚えつつも、いつとはなしに忘れ去る感情を経験すると思われる。本稿ではこれを「とまどい」と呼び、MSWがこの「とまどい」に向き合う臨床的有用性を明らかにすることを目的とした。

調査対象・方法は入院中の認知症患者を抱える家族(3名)に対する半構造化面接と、この家族にMSWとして関わった筆者自らを媒体とするエピソード記述である。検討の結果、家族はMSWの問いに明確な返答をさけ、ためらいという態度で言語化に至らない不安を表出していたことが明らかとなった。

この家族のためらいと同時に、MSWは「とまどい」を覚えていた。すなわち「とまどい」に向き合う臨床的有用性は、MSWが家族に深く話を聞かなければならないというセンサー、さらにはMSWと家族の関係性が損なわれかねない瀬戸際にあるという気付きの役割にあることが導かれた。

ただし、退院が計画的に進むことによりMSWは「とまどい」を霧散させやすい。それを避け、「とまどい」を実践の向上に結び付けるためには、「『とまどい』を生み出す(家族とMSWの)関係性の逆転」「『どまどい』を霧散させる安堵感」「MSW本位の考えに対する内省」に留意すべきである。

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© 2022 日本保健医療社会福祉学会
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