日本薬物動態学会年会講演要旨集
第18回日本薬物動態学会年会
セッションID: 10C09-2
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3’-Hydroxyacetanilideによるマウス肝CYP2E1の不活性化
*中村 多恵桝渕 泰宏堀江 利治
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キーワード: h-5, m-3, c-38
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抄録

【目的】3’-Hydroxyacetanilide(3’-OH APAP)はacetaminophen(APAP)の異性体であるが、肝毒性を示さない。3’-OH APAPのreactive metaboliteは反応性が高く、活性化酵素であるCYP2E1の活性部位から遊離せず、標的タンパクに到達しないため肝毒性を示さないと考えられており、代謝物の反応性と肝毒性の関係を示す典型的な例とされている。今回、この仮説を検証するアプローチの一つとして3’-OH APAP ならびにAPAPのCytochrome P450(P450)に対する不活性化作用を調べ、活性部位への結合性を評価した。
【方法】肝ミクロゾーム(Ms)を8週齢の雄性CD-1マウスにより調製した。このMsを3’-OH APAPまたはAPAPとNADPH生成系と共にプレインキュベートした後、p-nitrophenol水酸化活性(CYP2E1)等P450分子種の指標となる薬物代謝酵素活性を測定した。
【結果・考察】3’-OH APAPのp-nitrophenol水酸化活性に対する直接の阻害効果はわずかであった。しかし、肝MsをNADPH存在下3’ -OH APAPとプレインキュベートすることにより阻害効果が増強し、3’-OH APAP代謝に伴うCYP2E1の不活性化が示された。CYP2E1の残存活性は反応時間に対して一次速度で低下し、得られた速度定数は3’ -OH APAP濃度に対して飽和性を示した。また、不活性化に対して還元型グルタチオンの防御効果は見られなかった。一方、測定した他の分子種(CYP1A2、CYP3A11、CYP2D9)の活性への影響は認められなかった。これらのことから、3’-OH APAPがCYP2E1の選択的なmechanism-based inactivatorであることが示唆された。これに対し、APAPは上記のいずれのP450分子種に対しても不活性化作用は見られず、reactive metaboliteの反応性の差を見出すことができた。なお、ヒト肝MsにおいてはCYP2E1への影響は見られず、3’-OH APAPの代謝における種差が認められた。

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© 2003 日本薬物動態学会
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