日本薬物動態学会年会講演要旨集
第18回日本薬物動態学会年会
セッションID: 10C09-3
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炎症性腸疾患モデルにおける肝薬物代謝能の低下とその要因
*桝渕 泰宏堀江 利治
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キーワード: d-17, a-19, i-14
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抄録

【目的・方法】肝臓以外の疾患においても肝薬物代謝能が低下することが知られている。原因となる内因性物質が、障害臓器から血流を介して肝臓に達することが肝代謝酵素に対する影響の発端と考えられるが、詳細は不明である。我々はインドメタシンによる肝P450のdown-regulationのメカニズムを調べる過程で、インドメタシンが小腸上皮細胞を傷害することにより門脈血に侵入する腸管由来の炎症メディエーターが、肝P450の発現に影響する可能性を見出した。本研究ではインドメタシンに加えて、炎症性腸疾患のモデルとしてデキストラン硫酸ナトリウムならびにトリニトロベンゼンスルホン酸誘発性大腸炎モデルを作成し、これらモデルの肝薬物代謝能の変動と、P450分子種間での差異、腸管障害との関係、炎症メディエーターとの関連等を検討した。【結果・考察】いずれのモデルにおいてもP450依存性の肝薬物代謝酵素活性が低下した。P450分子種により低下の程度は異なり、ラットにおいては概してCYP3A2、CYP2C11のmajor formへの影響が大きかった。分子種選択性にはモデルによる差異も認められたが、腸管障害の部位や程度によって門脈に流入する炎症メディエーターが同じでないため、その様な差異を生み出しているものと考えられた。P450のdown-regulationに関与すると推定される門脈血のサイトカインを測定した結果、Tumor necrosis factor-aは検出限界下であったが、いすれのモデルにおいてもインターロイキン-6(IL-6)レベルの上昇が観察された。エンドトキシン感受性および非感受性マウスを用いた検討では、インドメタシンによる肝P450のdown-regulationに腸管由来のエンドトキシンが関与することが示されたが、非感受性マウスにおいても低下が見られたCYP1A2等ではIL-6等のサイトカインが門脈血を介して肝薬物代謝能に影響するものと考えられた。

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© 2003 日本薬物動態学会
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