2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 186_1
免疫抑制薬の進歩や患者管理の向上により腎移植の成績は飛躍的に向上した。これは、2000年代までのT細胞免疫制御に重点をおいた免疫抑制薬の開発により、急性拒絶反応の発生率は大幅に低下したことに起因している。しかしながら、2000年以降では移植腎生着率は、それほど大きな改善を認めておらず、抗体関連型拒絶反応(ABMR)に対する制御が相対的に欠けていたことが明らかとなり、予後におけるABMRの重要性が浮き彫りとなった。つまり、ABMRをいかに予防し、また治療していくかが今後の大きな課題とってきた。また近年の抗体検査法の進歩によって従来は検出できなかった抗体も検出可能となったが、これらの臨床的意義はまだ十分に解明されていない。これらの背景をもとに日本移植学会の臓器移植抗体陽性診療ガイドライン策定委員会が中心となり、「臓器移植抗体陽性診療ガイドライン2018年版」が2018年10月に発行された。早いもので発行後2年が経過したが、その間にも新規薬剤や治療に関する多くの知見が国内外より報告されている。本セッションでは、本ガイドライン発行後に報告された新たな知見を紹介し、今後の診療への応用の可能性について検討したい。