2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 184_1
T細胞性拒絶の制御により,移植成績は目覚ましく発展してきたが, 抗体産生を含むB細胞系を制御には現在も課題が残る.現在までの知見、今後の課題を明らかとするために,厚生労働科学研究費補助金免疫アレルギー疾患実用化研究事業(移植医療技術開発研究分野)「臓器移植における抗体関連型拒絶反応の新規治療法の開発に関する研究(江川班)」の事業として『臓器移植抗体陽性診療ガイドライン2018年版』が作成、出版された.膵移植に関しては、16のクリニカルクエスチョン(CQ)に対して、14名の膵移植実務者委員に協力を依頼し,各CQに対しシステマティックレビューを行った.2020年を迎え、同ガイドラインの改定が求められている.前回のシステマティックレビュー以降、膵移植における抗体陽性に関する新たな文献は3件のみであった.一方、江川班においては既存抗体陽性症例と抗体関連型拒絶(AMR)症例に対するリツキシマブの保険承認を目指した他施設共同臨床研究が行われている.膵移植においてはAMRに対するリツキシマブ投与例は無かったが,既存抗体陽性の4例にリツキシマブ投与が臨床試験として行われた.今後、これらから得られた知見を盛り込んだ新たなガイドラインの改定を目指していく予定である.