移植
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移植医としての再生医療への期待
江口 晋
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2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 226_1

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抄録

再生医療にて臓器作製が可能となれば、生体ドナー手術のプレッシャーなく移植医療の道が開ける。特に、自己細胞で自身の臓器を作製する事が出来れば、拒絶反応も起こらないし、脳死の患者さん、ご家族に臓器提供をお願いする必要もない。臓器移植による瀕死患者の劇的な改善を経験している肌感覚が、再生医療への大いなる期待を増幅させる。細胞を用いた再生医療・細胞療法の研究を行っていると、人工物、薬剤投与ではできない想定外の効果を目にし、驚愕することがある。つまり、細胞はタイムリーに、かつ適量の臓器修復因子や幹細胞刺激因子を産生し、放出する究極の自己調整型の治療である。最近、本邦での法整備の上で、細胞を用いた治療の臨床研究が行われ、今後の細胞、組織療法による展開のpath wayが見えてきたように感じる。細胞、組織移植による治療の開発により、難治性疾患の患者さんが治癒され、ALDが向上することは福音で、医療経済に寄与する事が出来れば尚更である。最終的には臓器を作製することが究極の目標であろう。自己細胞で修復再生臓器を作製し、それを吻合し移植する手術を行う事、そのような時代が来れば移植外科医冥利に尽きると夢見ている。

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