2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 244_1
医療の発展に伴い臓器・造血幹細胞移植患者数も増加しているが、術後感染症のマネジメントや感染対策が重要である。造血幹細胞移植患者では、移植前から著明な免疫不全を伴うために感染症を伴うこともあるが、臓器移植においては術前に免疫不全を有することは比較的限られる。一方、臓器移植後には様々な感染症を発症するが、移植後の時期や移植臓器により原因菌に特徴がある。移植初期(移植後4週以内)には、患者の基礎疾患や手術の合併症としての感染症を発症し、細菌や真菌がその主な原因病原体となる。ときに医療関連感染としての耐性菌も関与する。移植中期(移植後1〜6ヶ月)には免疫抑制薬による細胞性免疫不全に伴う日和見感染症が問題となる。ヘルペスウイルスやサイトメガロウイルス、ニューモシスチス肺炎等の予防も重要である。移植後期(6ヶ月以後)では状態が安定し、免疫抑制薬も減量され、予防薬が中止される。一方、レシピエントの多くは院外で生活するために市中感染症の感染対策が必要となる。また、移植臓器特異的な感染症としては、肺移植ではアスペルギルス、肝移植では腸内細菌やカンジダ、腎移植ではサイトメガロウイルス、BKウイルス等による感染症が知られている。講演では臓器移植および造血幹細胞移植に伴う感染症の診断および感染対策について概説する。