移植
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腎移植時における多発性嚢胞腎に対する鏡視下後腹膜アプローチ自己腎摘術
堀田 記世彦岩見 大基田邉 起岩原 直也篠原 信雄
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2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 249_2

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抄録

【背景】常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)に対する腎移植の際には、移植床の確保のために自己腎摘術を行う場合が多い。当施設では、腰部斜切開にて腎摘術を行っていたが侵襲が大きいため、後腹膜鏡下腎摘術を取り入れた。【対象・方法】対象は腎移植時に鏡視下後腹膜アプローチにて自己腎摘を行ったADPKD患者18症例(右14、左4)。手術は4ポートにて行い、側臥位で後腹膜鏡にて腎を遊離した後に仰臥位となり腎移植時の傍腹直筋切開創より摘出した。摘出腎の容量は平均1198ml (622-1725)であり、従来の腰部斜切開による腎摘術を行った10症例と術式、手術成績について比較した。【結果】従来法では腰部斜切開と傍腹直筋切開の大きな手術創が2つ必要であったのに対して、当術式では傍腹直筋切開と4ポートの手術創で摘出できた。手術時間は後腹膜鏡と腰部斜切開それぞれ平均162±28分と150±25分と有意な差はなかった。出血量は全症例少量であり、輸血した症例はなかった。離床開始、食事開始までの期間は鏡視下手術で有意に短く、術後の鎮痛剤の使用回数も鏡視下手術で有意に少なかった。腎摘術に伴う合併症は後腹膜鏡では認めなかったが、腰部斜切開では1例胸膜損傷による気胸を合併した。【結語】当術式は侵襲が少なく、有用な術式である。今回は手術成績とともに安全に施行するポイントについても供覧する予定である。

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