移植
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CEACAM1はASK1-p38シグナルを抑制し冷保存中の肝障害を緩和する
中村 公治郎影山 詔一平尾 浩史伊藤 貴洋門野 賢太郎小島 秀信岩崎 純治畑 俊行飯田 拓長田 圭司松浦 正徒塩田 哲也伊丹 淳京極 高久
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2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 259_1

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抄録

冷保存中肝障害の機序は解明されておらずバイオマーカーや予防法も確立していない。ASK1-p38シグナルは細胞特異的に冷ストレス障害に関与するが,肝臓における関与および細胞接着分子であるCEACAM1 (CC1)との関りについては分かっていない。CC1 knockout(CC1-KO)またはWTマウスからグラフトを採取し18時間冷保存後に門脈から生食2mlをフラッシュし,フラッシュ液とグラフトを回収した。CC1欠損はグラフト内4HNEを増強し,HMGB1細胞質移行を促し,ASK1/p-p38発現を高め,フラッシュ液HMGB1濃度を増したが,ASK1阻害剤を冷保存液に添加するとこれらの変化は抑制された。肝細胞培養でもCC1欠損は冷ストレスによる4HNE発現を増強,HMGB1細胞質移行を助長,ASK1/p-p38の発現を高め,死細胞数を増したが,ASK1阻害(siRNA)はこれらの影響を抑制した。WTまたはCC1-KOグラフトを18時間冷保存後にWTレシピエントに移植したところ,CC1欠損は再還流後肝障害を助長し,術後20日間生存を悪化させた(WT/CC1-KO=44/0%)が,CC1-KOグラフトの冷保存中にASK1阻害剤を加えると移植後肝障害は緩和され生存も改善した(50%,p=0.0217)。CC1はASK1-p38シグナルを抑制し冷保存中の肝障害を軽減し移植後の肝機能を改善する。

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