移植
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共同開発した移植肝灌流保存装置を用いた過小肝に対する短時間酸素化低温灌流保存の有効性の検討
石井 大介松野 直徒榎本 克朗斉木 俊一郎小池 悠希細野 将太合地 美香子岩田 浩義小原 弘道西川 裕司井上 将佐々木 工古川 博之
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2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 259_2

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抄録

欧米において、マージナルドナーの肝保存として機械灌流保存が臨床レベルで行われている。我々は多くの実験結果に基づき2017年から、企業と腎臓・肝臓の灌流保存装置の共同開発に取り組み、腎臓に関しては臨床試験を始めている。今回、肝臓用装置を用いて前臨床試験としてブタを用いた実験を行ったので報告する。保存装置は基本的に病院据え置き型であり、実験ではブタ70%肝切除を行い、30%残肝をマージナルグラフトとした。8時間の単純冷却保存群と6時間の単純冷却保存+2時間の短時間酸素化低温灌流保存群とし、自己血を用いて体外再灌流試験で比較した。結果は機械灌流保存中、門脈圧8-10mmHg、肝動脈圧30-50mmHgと安定して流量が制御可能であり、温度も4-6℃と安定していた。再灌流2時間でのAST,LDH,Lac,COHbの低値を灌流保存群で認めた。病理学的検討でSuzuki’s scoreは灌流保存群で有意に低値であり、免疫染色においてもERG染色(内皮細胞傷害のマーカー)、CD42b染色(血小板凝集のマーカー)ともに灌流保存群で有意に良好な結果であった。さらに肝組織におけるPCR検査においてTNFα、IFNγ、IL-1β、IL-10が再灌流2時間の時点で灌流保存群で有意に低値であった。以上の結果から短時間酸素化低温灌流保存は有用な保存方法と考えられた。

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