移植
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膵臓移植が待機患者の生命予後に与える影響
伊藤 泰平剣持 敬栗原 啓會田 直弘松島 肇
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2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 298_1

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抄録

<背景>I型糖尿病患者に対する移植医療の適応を考える上で,患者生命予後に与える影響を知ることは重要である.本邦膵臓移植レジストリデータとJOTの膵臓移植待機患者の生命予後を比較検討した. <方法>膵臓移植(n=361)と,待機患者(n=699)の生命予後と比較検討した. <結果>待機患者の1,5,10年の生存率はそれぞれ98.4%,90.3%,78.1%であったが,移植後の生存率はそれぞれ100%,97.5%,88.9%と有意に改善していた(P=0.029).さらに腎臓同時移植(SPK)待機患者の1,5,10年の生存率はそれぞれ98.2%,89.4%,75.4%であったのに対し,SPK後はそれぞれ100%,94.6%,88.8%と生存率は有意に改善していた(P = 0.026).Cox比例ハザード回帰による多変量解析では,手術前の糖尿病期間がSPK術後の患者生存に影響を与える独立した危険因子(ハザード比= 1.095,P = 0.012)であることが明らかにとなった.術前の糖尿病歴が35年以上では,移植後の生予後は有意に悪化することが示唆された. <結語>膵臓移植は,1型糖尿病の患者,特に腎不全合併例にSPKを施行することによって,生命予後を改善することが明らかとなった.術前の糖尿病歴が短い方が移植後の生命予後の改善が図られるため,できるだけ早期の移植が肝要であると考えられた.

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