移植
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腎不全患者の生涯を支える ー再導入からの挑戦ー
西平 守邦山上 孝子松岡 裕石丸 由佳堀真 友子安田 香植木 常雄打田 和治両角 國男
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2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 300_1

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抄録

腎不全患者の予後に腎移植は重要な選択肢であるのは既知であり,本邦では近年1800名程度の腎移植が行われている。腎移植医療の課題として,以前は拒絶反応による移植腎廃絶が問題であったが,免疫抑制剤の進歩によりその割合は減少し長期生着が図れる時代となった。ただし,残念ながら再導入となる患者が一定数いることは忘れてはならず,日本透析医会の年末統計では毎年約200名程度が移植腎荒廃に伴う透析再導入となっている。再導入は我々にとって治療の敗北と捉われがちだが,決してそうではない。本邦では再導入の平均年齢は56歳であり,透析導入患者全体の平均69.9歳より13年も若い段階での再導入であり新たなスタートと捉えるべきである。しかし,海外の報告では,腎移植後の再導入は通常の導入と比較し予後不良とされ,年齢や再導入時の貧血や栄養状態,CVDリスクと関連すると言われており,再導入前の積極的治療介入と計画的導入の重要性が指摘されている。当院では,外科と内科の共同で診療を行なっており,CKD-T stage4の段階からより積極的に内科が関わっている。保存的腎不全治療の強化にあわせ腎代替療法の説明も早い段階から行っている。移植腎荒廃は患者の人生において再スタートと認識し,トータルの腎不全ライフをより良く過ごすために我々医療者はどのように道標を提案できるか,当院での現状を紹介しながら今後の課題を共有していきたい。

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