2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 360_3
【はじめに】臓器移植法改正により脳死下腎移植は増加したが,現状はドナー不足にある.本邦では多くの心停止下腎移植が行われてきており,今後も継続して施行が求められる.本邦心停止下腎移植の成績を検討した.【方法】2018年末までの本邦献腎移植データ3226例のうち他臓器同時移植を除く心停止下2239例,脳死下684例を対象に比較検討を行った.また生着率,生存率と背景との関連を検討した.【結果】心停止下腎移植の5年生存率,Death censored生着率は90.4%,91.5%であり,脳死下腎移植の92.8%,93.9%に比べ軽度低値であった.心停止下移植において生着率に着目し背景を検討すると,ドナー年齢50歳以上,脳血管障害による死亡,総阻血時間12時間以上である場合,それぞれ生着率の低下を認めた.多変量解析によりドナー年齢50歳以上と12時間以上の総阻血時間が有意なリスク因子と示された.さらにドナー年齢(50歳以上)と総阻血時間(12時間以上)によって4群に分けて検討すると,ドナー年齢50歳以上かつ12時間以上の総阻血時間がある場合,5年Death censored生着率は86.8%と他群の生着率(91.7 - 96.5%)と比較して有意に低値であった.【結語】本邦の心停止下腎移植の成績は良好であるが,ドナー年齢が50歳以上では総阻血時間の延長がリスク因子となるため注意が必要である.