移植
Online ISSN : 2188-0034
Print ISSN : 0578-7947
ISSN-L : 0578-7947
国立循環器病研究センターにおける心臓移植後急性細胞性拒絶反応の経験とスクリーニング法の検討
塚本 泰正瀨口 理渡邉 琢也望月 宏樹下島 正也羽田 祐大郷 恵子池田 善彦畠山 金太福嶌 五月藤田 知之福嶌 教偉
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s106

詳細
抄録

急性細胞性拒絶反応(ACR)は心臓移植後の主要な合併症であるが、病初期には無症状かつ非侵襲検査で特異的所見が得られづらく、定期的な心内膜心筋生検による評価が必要である。一般に遠隔期にはACRによる死亡頻度は低下するとされているが、適切な生検頻度などスクリーニング法について明確なエビデンスに乏しい。今回我々は当院でのACRの実態を後方視的に解析したので報告する

【対象と方法】対象は1999年5月から2020年4月までに当院で心臓移植を受けた移植時18歳以上の129症例(男性74%、移植時年齢41.8±12.9歳、観察期間7.4±5.0年)。現在の心筋生検のスケジュールは1,2,3,5,7,11週目4.5,6,9ヶ月目、2年まで2/年、10年まで1/年、それ以後1/ 2年で免疫維持療法はタクロリムス(Tac)(2005年以前はシクロスポリン(Cys))、ミコフェノール酸モフェティル、プレドニゾロンである。腎機能低下、高齢、抗ドナー抗体陽性例等でバキリキシマブを使用。

【結果】129例中13例にGrade 2R以上のACRを認めた。心不全発症は抗体関連拒絶も合併したGrade 2Rの1例(術後3.5年)のみで、全例で治癒しACRによる死亡例は認めなかった。Grade 2R以上ACR発症症例は移植後3ヶ月未満0%、3-6ヶ月2.3%、6ヶ月-1年2.4%、1-3年4.2%、3-5年4.3%、5-10年3.3%、10年以上0%であった。手術後初回カルシニューリン阻害薬がCysであった15症例ではACR発症頻度が40%とTac症例(114症例、ACR6.1%)に比して有意に高頻度であった(p<0.05)。

著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top