2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s122
背景;肝臓外科手術では肝移植後 small for size・術後肝不全などの問題があり、これらの根治的治療は存在しない。当教室では、肝切除モデルマウスにおいて、移植されたMuse細胞が損傷部特異的に集積し肝組織を構成する各細胞に分化することを報告した。ヒト肝切除や肝移植など物理的傷害を伴う治療におけるMuse細胞動態・意義および外科侵襲との関連に関する報告はない。目的;肝手術におけるMuse細胞動態を明らかにし、1) Muse細胞が侵襲度の指標となり得るか検証すること、2)肝再生との関連について検証すること。対象と方法; 本研究は前向き研究として進行中であり、現時点37症例についてデータの一部を報告する。1) 侵襲度評価として、major liver resection (MLR)とminor liver resection、および腹腔鏡下肝切除と開腹肝切除における末梢血Muse細胞動態の解析を行う。2) 肝再生評価として、Muse細胞動態と肝volumetryの検討を行う。結果; 担癌患者でBase lineのMuse細胞数が高値であった。Muse細胞数は術後3日でピークがみられた。合併症全例でMuse細胞数の再上昇がみられた。Muse細胞増加率(ΔMuse)はMLR群で有意に高値であった(p=0.003)。ΔMuseは合併症例を除外すると開腹群で有意に高値であった(p=0.040)。肝volumetryで肝再生率が高い群でΔMuseが有意に高値であった(p=0.027)。結語;Muse細胞は侵襲度の指標となる可能性がある。Muse細胞により肝再生が促される可能性がある。