移植
Online ISSN : 2188-0034
Print ISSN : 0578-7947
ISSN-L : 0578-7947
「提供の意思に応えるために」という言葉に導かれて
江川 裕人
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s133

詳細
抄録

この1年は、COVID−19に対して、日本移植学会、厚生労働省、J O T、日本集中治療医学会、日本救急医学会、日本脳神経外科学会が結集して取り組んだ年でした。まず専用ホームページを立ち上げて、未知の状況に対して警戒体制を敷き、情報収集を進めタイムリーに情報を発信しつつ、移植継続・再開のための可能な限りの方策を行政と進めた結果、移植現場からクラスターを出すことなく移植医療を最大限に継続することができました。人事交流を軸として築き上げてきた厚生労働省との連携と信頼が臓器提供現場でのP C R検査容認といった有事における迅速な対応を可能としました。臓器提供環境改善委員会で進めてきた互助制度が人流抑制に貢献しひいては臓器提供の意思を叶えることに貢献することができました。COVID−19の移植医療への影響に関する調査研究として、生体移植と死体移植、臓器提供を対象とした三つの特別研究班と、臓器移植患者のワクチン接種の効果と影響を調査する研究班の合計4つの厚生労働研究班が立ち上がりました。厚生労働科学研究「脳死下・心停止後の臓器・組織提供における効率的な連携体制の構築に資する研究」(嶋津班)と同「5類型施設における効率的な臓器・組織の提供体制構築に資する研究」(横田班)にも移植学会の委員会活動を分担研究とする形で参加して共に歩んでいます。この第57回学術集会で、布田先生・酒井先生率いるTransplant Physician 委員会が内科系基幹学会との連携を動かし始めています。「提供の意思に応えるために」という行動原理を共有した個人・団体の連携を進めてきたこの5年間の成果が未曾有の困難な状況の中で進むべき道を照らし我々を導いてくれています。

著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top