移植
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COVID-19と臓器移植との関わり
寺嶋 毅
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2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s13

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抄録

COVID-19の流行は臓器移植と移植後に影響を及ぼしている可能性がある。

前者は、臓器提供や移植手術数に及ぼす影響である。自施設では眼科にて角膜移植が積極的に行われている。COVID-19流行前の2019年度と流行期である2020年度を比較検討したところ、移植数は224から199に減少した。要因のひとつとして自施設での検眼数が減少したことがあげられた。死亡数、連絡数、出動数、オプション提示(OP)数、献眼承諾数は、552 から472、540 から463、331 から196、259 から142、22 から8と減少した。連絡に対する出動率が61.3%から42.3%、OPに対する献眼承諾率が8.5%から5.6%と低下していた。出動率低下の要因として、死亡時にCOVID-19の疑いが完全に否定できないケースの増加が考えられた。承諾率低下の要因として、面会制限によって家族として満足いく介護やお看取りができなかったこと、できるだけ早くつれて帰りたいという家族の思いなどが考えられた。

後者は、移植後の患者がCOVID-19を発症した場合の治療への影響である。臓器移植あるいは免疫抑制剤の内服はCOVID-19の重症化因子のひとつにあげられている。我々は腎移植後の免疫抑制剤服用中にCOVID-19肺炎を発症した3症例を経験した。COVID-19の重症化には過剰な免疫の関与が知られており酸素吸入を必要とする中等症Ⅱ以上の症例ではデキサメタゾンが推奨されている。免疫抑制剤を服用中での薬物療法など治療経験を考察を加えて提示したい。

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