移植
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心臓移植予後に関係するPTLDとEBウイルス感染症
服部 英敏加藤 文代野本 美知留菊池 規子市原 有起斎藤 聡新浪 博士萩原 誠久布田 伸一
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2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s137

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抄録

心臓移植後の予後に影響する移植後遠隔期の合併症である移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)は、その80%以上の症例はB細胞起源で、Epstein-Barr virus(EBV)感染を認める。EBV特異的細胞障害性T細胞(EBV-CTL)の機能不全を背景としたEBV感染不死化B細胞の制御不能な増殖を病態とし、リンパ組織の反応性増殖から悪性リンパ腫まで幅広い疾患スペクトラムを呈する。PTLDのリスクファクターとしては、EBV感染状態に影響する免疫抑制状態、移植時年齢、移植からの期間、人種などがあげられるが、EBV陽性ドナーからEBV陰性レシピエントへの心臓移植例では高率に発症する。ハイリスク症例では、定期的EBV-DNA量のモニタリング検査が早期診断に有用であるが、腹部症状や呼吸器症状など多彩な臨床像を呈するため、まずはPTLDを疑うことが診断の第一歩といえる。

本シンポジウムでは、当院および関連施設における心臓移植後症例(100例)において、歴史背景に応じた免疫抑制状況でのPTLD発症例(確診5例)について後方視的な検討結果を述べ、治療目標であるPTLD消失とともに移植臓器の機能維持のためのエベロリムスおよびリツキシマブ導入を加えた免疫抑制薬の調整、抗ウイルス療法、化学療法の効果について、症例提示を加えて解説する。

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