2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s138
【背景】移植後EBV感染症はリンパ増殖性疾患PTLDに至るまで病像は多彩であり、スクリーニング、治療に関しては、尚発展の余地がある。【目的】小児心臓移植におけるPTLDおよびEBV high loadに対する検査、治療の実際を東京大学、当センターの事例から考察する。【結果】症例はPTLD診断2例および、移植後EBV high loadを生じた2例。PTLD診断例は、発症年齢が3歳と1歳で、それぞれ移植後2年、4カ月での診断。前者はカルシニュリン阻害薬CNIの減量、リンパ節摘出、リツキシマブ投与で緩解した。後者はさらに化学療法を要したが緩解した。EBV high load例は診断年齢が3歳と2歳、それぞれ移植後6ヶ月および6カ月以内。前者は急性拒絶反応のためにCNIの減量が難しく、画像検査で可能な限りPTLDを除外してリツキシマブを投与した。後者は現在に至るまで5年近く、高EBV血症が持続しているが、CNIの減量、エベロリムスへの変更調整で、PTLD発症には至っていない。いずれも当センター高度感染症診断部において、末梢血における感染細胞同定解析を行い、B細胞感染性であることを確認した。【考察】移植後EBV感染症は病像が多彩であり、専門家との連携が有用である。当センターでは早期から腫瘍科および高度感染症診断部のサポートを得ている。末梢血における感染細胞の同定解析は特異な検査であるが、EBV high load例に対する感染細胞同定解析がリツキシマブ投与を準備する戦略につながり得る。