移植
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経時的末梢血リンパ球モニタリングによる腎移植後DSA産生のバイオマーカー探索
田中 一樹岩﨑 研太奥村 真衣三輪 祐子安次嶺 聡石山 宏平細道 一善藤田 直也小林 孝彰
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2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s150

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抄録

腎移植における拒絶反応は確定診断のため侵襲的な検査である移植腎生検が必須となるが、患者負担が大きく頻回な検査を行うことは不可能である。医療分野における低侵襲のLiquid Biopsyサンプルを用い、バイオインフォマティクスと次世代技術を用いた少量サンプルで生体内の病態を把握する試みは、今後の移植医療においても必要不可欠である。今回我々は移植後de novo DSAを産生した生体腎移植施行症例(9症例:男性8症例、女性1症例)を対象とし、移植前、移植後(1~2,6,12,24ヵ月)に採取した末梢血単核細胞36検体からmRNAを抽出し次世代シークエンサーにて遺伝子解析を行った。移植前リツキシマブ使用群においては、1年後でIgG関連遺伝子の有意な減少を認めていた。DSA陽性症例では、補体・凝固を含めた炎症性のマーカーの上昇が確認された。マクロファージ関連遺伝子の上昇も確認でき、獲得免疫を基盤とした免疫反応で産生されるDSAの出現と、自然免疫との関連が示唆された。単一遺伝子ではなく、複数の各種免疫反応に関わる遺伝子群の変化をバイオインフォマティクスのアプローチを用いて解析を行うことにより、低侵襲かつ少量のLiquid Biopsyサンプルから、DSA産生までの経時的変化を追跡することが今後必要になる。

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