移植
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肝移植後小児レシピエントに対する弱毒生ワクチン投与
渡辺 正明後藤 了一川村 典生巌築 慶一嶋村 剛武冨 紹信
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2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s160

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抄録

背景:臓器移植後および免疫不全状態における弱毒生ワクチンは、流行状況などを加味し実施を考慮すべきとされている。小児肝移植患者に対する弱毒生ワクチンの安全性と有効性を検討した。

方法: 小児肝移植患者を対象とし、ムンプス、風疹、麻疹、水痘の抗体価(IgG)、移植前ワクチン接種歴を検討した。ワクチン接種歴にかかわらず抗体価陰性で、接種基準(免疫抑制剤の血中トラフ値が低値、直近6ヶ月間肝機能安定、十分なリンパ球数、リンパ球幼若化試験が基準値内、血清IgG 500 mg/dl以上)を満たす患者に対して、倫理委員会承認のもと、インフォームドコンセントを得た上で当該疾患の弱毒生ワクチンを接種した。接種後2ヶ月、以後6ヶ月毎に該当抗体価を測定し、安全性と有効性を検討した。

結果:対象は、2-15歳の32例(男児8例、胆道閉鎖症27、急性肝不全2、Alagille症候群2、肝芽腫1)。抗体価陰性、抗体価陰性/移植前ワクチン接種は、ムンプス:13例(41%)、4/6例(67%)、風疹:15例(47%)、10/14例(71%)、麻疹:8例(21%)、14/14例(100%)、水痘:16例(50%)、5/7例(71%)であった。10例で接種基準を満たし、ワクチン接種後の抗体陽転化率は、ムンプス3/5例、風疹5/5例、麻疹5/5例、水痘4/7例であった。接種による疾患発症や有害事象は認めなかった。

結語:ワクチン接種基準を満たす肝移植後小児患者に対する弱毒生ワクチン接種は安全に施行でき、多くの症例で抗体が獲得された。

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