2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s189
画期的なシクロスポリンの発見で心臓移植の急性期予後は1980年代に著明に改善し、1990年代後半より心臓移植後慢性期合併症に臨床的注目点はシフトした。心臓移植では、移植心冠動脈病変(CAV)、悪性腫瘍、腎機能低下が移植後慢性期の予後を規定する3大合併症であるが、わが国で2007年に保険適用になったエベロリムス(EVL)は、免疫抑制効果と共にProliferation signal inhibitorの作用を担うことから、CAVにおいては血管内膜増殖抑制、悪性腫瘍合併例にはその抗腫瘍効果、そして腎機能低下例においては腎毒性をもつカルシニューリン阻害薬(CNI)を減量しEVLを併用することで、3大合併症への対策とその結果に期待が寄せられた。その後15年間に亘りEVLは心臓移植領域で使用され、創傷治癒遅延、リンパ浮腫、脂質異常、口内炎、等の有害事象はあるものの、CNI、代謝拮抗薬、ステロイドの三薬に続く4番目の移植後免疫抑制薬としての地位を確保してきている。本ワークショップでは、わが国で一番長いEVL使用経験のある心臓移植領域から、自験例も合わせた様々な結果について報告し、さらに心臓再移植待機の管理も考慮した今後に向けてのEVL使用方法についても報告する。