移植
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エベロリムスは心移植患者の血清KL-6を上昇させる
鈴木 悠平折山 豊仁山本 武人波多野 将網谷 英介武城 千恵木下 修安藤 政彦加賀美 幸江今井 博子嶋田 朝子髙田 龍平鈴木 洋史小野 稔
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2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s190

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抄録

【背景・目的】エベロリムス(EVL)は副作用として間質性肺炎(IP)を高頻度に引き起こすことが知られているが、EVL服用患者において血清KL-6を測定した報告は極めて限られている。そこで、本研究では心移植患者を対象にEVL導入前後の血清KL-6を調査した。

【方法】2006年5月~2020年1月までに東京大学医学部附属病院で心移植を受けた15歳以上の患者をEVL導入群およびEVL非導入群に分類し、各群の血清KL-6のベースライン値およびピーク値を調査した。

【結果・考察】EVL導入群(67例)における血清KL-6のベースライン値およびピーク値はそれぞれ178(80 - 469)U/mL、292(126 - 2694)U/mLであり、EVL導入後に有意な上昇を認めた(P < 0.001)。また、16例(23.9%)においてピーク値は基準値(500 U/mL未満)を上回った。一方で、EVL非導入群(15例)の血清KL-6はベースラインで183 (72 - 582) U/mL、ピークで183 (80 - 489) U/mLと有意な上昇を認めなかった。現在、各群の患者背景やEVLの服用量・血中濃度等が血清KL-6変動に与える影響について解析を進めている。

【結語】心移植後にEVLを投与した患者では、血清KL-6が上昇する可能性が示された。血清KL-6はEVLによる薬剤性IPの発症予測に有用である可能性があるため、EVL導入後は血清KL-6を慎重にモニターし、血清KL-6が上昇した場合には減量・中止といった対応も考慮すべきと考えられる。

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