移植
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エベロリムスによる肝臓内NK細胞の抗腫瘍活性増強効果の解明
箱田 啓志田中 友加Saparbay Jamilya田原 裕之谷峰 直樹大平 真裕井手 健太郎大段 秀樹
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2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s191

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抄録

【目的】

mTOR阻害剤は、HCC肝移植患者の予後に有効であることが報告されているが、自然免疫系に与える影響については不明な点が多い。本研究では、mTOR阻害剤であるエベロリムス(EVR)の肝内在性および脾臓NK細胞への影響についてマウスモデルを用いて解明した。

【方法と結果】

B6マウスにEVR(0.0125~0.25mg/kg/day)を7日間腹腔内投与した。EVR投与で、肝臓内のTRAIL表出NK細胞の割合は有意に上昇したが、脾臓では上昇を認めなかった。細胞傷害性試験では、Hepa1-6細胞に対して高い傷害活性を誘導した。次に、NK細胞の分化成熟過程へのmTOR阻害剤の影響について解析した結果、EVRは肝臓内NK細胞に対して、未成熟~中間段階におけるNK細胞のTRAIL発現を誘導するが、後期段階のNK細胞には影響しないことを確認した。肝臓のNK細胞成熟抑制へのmTOR阻害の分子経路についてmTOR依存性ネガティブレギュレーターを探索した結果、NK細胞のFoxO1は、mTOR依存性のAKTリン酸化障害の結果として活性化され、活性化されたFoxO1はTRAIL発現を誘導し、また、NK細胞の成熟を阻害することで、肝臓未成熟NK細胞の抗腫瘍活性を促進した。

【結語】

EVRは未熟な肝臓内NK細胞の抗腫瘍活性を高めることで臨床における抗腫瘍効果が期待されることが示唆された。

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