移植
Online ISSN : 2188-0034
Print ISSN : 0578-7947
ISSN-L : 0578-7947
心停止ドナーからの心臓移植にむけた、移植後心機能評価方法の検討
井之口 慶太戸田 宏一宮川 繁吉岡 大輔齋藤 哲也河村 拓史樫山 紀幸河村 愛松浦 良平澤 芳樹
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s204

詳細
抄録

【背景】我が国における心移植は2010年の法改正後増加傾向であるが、依然として慢性的なドナー不足であり、移植待機日数は年々延長している。ドナー不足を解消すべく、海外では心停止ドナー(Donation after Circulatory Death: DCD)心移植を実施している地域がある。近年の報告では、DCD心移植は脳死ドナー(Donation after Brain Death: DBD)と遜色ない治療成績であり、ドナー不足解決の一助となる可能性がある。一方で、DCDについては、摘出前の心機能をDBDと同様に評価することは困難であり、評価方法の構築が必要となる。当科では、DCD心移植後の心機能評価方法について検討するため、大動物のDCDモデルを作成した。

【方法、結果】家畜ブタ(5頭、44.5±8.7kg)を全身麻酔下に穿頭してバルーンを挿入・拡張させ、脳ヘルニアを惹起し、脳死モデルを作成した。脳死確認後、人工換気を停止すると8.8±3.5分で心停止となった。温阻血のまま静置し、心停止後0分、5分、15分、30分、60分にECMOにより全身灌流したところ、心停止後60分が経過した1頭を除く4頭は、電解質補正や輸血なしに、4.8±1.5分で自己心拍が再開した。

【結語】大動物脳死モデルから、人工換気停止によりDCDモデルが作成可能であり、心停止後温阻血30分までは全身灌流のみで心臓を蘇生できることが明らかとなった。今後はECMO補助下の蘇生後心機能の評価と、移植後の心機能予測因子の検討を計画している。

著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top