2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s203
【背景・目的】左心補助人工心臓(LVAD)装着患者において、LVAD関連感染症は頻度の多い合併症である。人工物感染であるがゆえに、抗生剤治療に対して抵抗性を示しやすく、特にポンプポケット感染に至るとしばしば治療に難渋する。かかる症例に対する心臓移植は、感染源の除去が可能となる反面、術後免疫抑制剤による免疫能低下による感染症増悪も懸念される。治療抵抗性LVADポンプポケット感染患者に対し心臓移植を施行した9例を検討した。【結果】平均年齢は43±11歳、LVAD装着期間は、1325±279日であった。原疾患は虚血性心筋症2例、拡張相肥大型心筋症3例、拡張型心筋症4例であった。全例移植時に、抗生剤治療および感染巣の開放ドレナージを行っていた。術直前平均CRPは3.2±3.7 mg/dlであった。移植心不全を起こした1例を除いた8例で心臓移植時に大網充填を同時に施行し、タクロリムス・ミコフェノール酸モフェチル・プレドニゾロンの3剤による免疫抑制療法を行いながら、術前と同様の抗生剤を継続した。全例で感染の再燃を認めず、局所陰圧閉鎖療法を併用する事で、移植後の創部治癒も良好であった。術後細胞性拒絶反応は全例でGrade 1R以下に抑えられていた。【まとめ】治療抵抗性LVADポンプポケット感染患者に対する心臓移植は、免疫抑制剤使用下に十分な感染コントロールが可能であり、有用な治療選択肢となりうる可能性が示唆された。