移植
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肺移植医療におけるリキッドバイオプシー
渡辺 有為平間 崇渡邉 龍秋大石 久新井川 弘道秋場 美紀春藤 裕樹田中 遼太野津田 泰嗣鈴木 隆哉野田 雅史岡田 克典
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2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s212

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抄録

肺移植後の生存率は全ての固形臓器移植の中で最も低い.これは肺が外界に暴露され,感染を合併する危険性が高いこと,慢性移植肺機能不全(CLAD)の根本的な治療法がないことが理由である.また急性期の移植肺機能不全 (PGD)もいまだ少なくない死因である.こうした死亡を防ぐためには,早期の診断と可及的な治療が必要であるが,肺移植患者では確定診断に必要なSolid biopsyが難しい場面も少なくない.このため肺移植領域でも血液など低侵襲に採取できる検体を用いるLiquid biopsyに関心が高まっている.

PGDは移植前に予測,診断することで避けられる可能性がある.近年ドナー肺体外灌流システム(EVLP)が実用化され,EVLPの灌流液中の炎症性サイトカイン,細胞死マーカー,ドナー由来のCell-free DNA(cfDNA)を解析し,PGDに陥る危険性のある肺を見極める試みがされている.急性拒絶と感染の鑑別は,肺移植後にしばし問題となる.近年,血液中のドナー由来のcfDNAを解析することで,拒絶の診断と広範な感染症のスクリーニングを同時にできる可能性が示されている.CLADは不可逆性であり,進行を防ぐためには早期の診断が必要である.最近,肺胞洗浄液から採取したcfDNAと炎症性サイトカインの解析によりCLADのサブタイプまで診断できる可能性が示されている.

リキッドバイオプシーは肺移植後のPGD,急性拒絶と感染,CLADを診断できる可能性があり,今後益々の発展が望まれる.

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