2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s213
【背景】
臓器移植の歴史は成熟期を迎え、グラフト機能維持を含む長期成績の向上が大きな課題である。今回我々はドナー由来血中遊離DNA(donor-derived cell free DNA;ddcfDNA)に着目し、肝臓・小腸でのグラフト機能評価に対する新規バイオマーカー研究に着手したので進捗を報告する。
【方法】
肝移植・小腸移植レシピエントを移植後1年未満の急性期群と1年以上経過した長期経過群に分類した。各プロトコールに沿って採血しcfDNAを抽出、次世代シークエンサーを用いたSNP解析の手法をもとにddcfDNA比率を算定し、採血データ・組織生検結果(線維化スコア・C4dスコア)との相関を評価した。
【結果】
2021年6月時点で研究参加者は69例(肝64例【急性期群、長期経過群各10、54例】、小腸5例【同各2、3例】) で、ddcfDNA解析が終了したのは肝移植急性期群1例(小児)、肝移植長期経過群24例。急性期群では虚血再灌流障害の影響でddcfDNAは高比率となるが、その後減少に転じ、拒絶反応時の上昇や治療後の反応等、既報で見られるような推移を得た。長期経過群24例ではddcfDNAとC4dスコア、ALT、γGTPと相関が見られた。小腸移植群は現在解析中である。
【結語】
更なる検体解析を進め、肝臓・小腸移植後グラフト機能評価に対するddcfDNAの有用性を検討する。