移植
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膵臓移植前後の合併症評価と慢性管理の課題
平塚 いづみ四馬田 恵鈴木 敦詞
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2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s25

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抄録

膵臓移植は特に末期腎不全を合併した1型糖尿病患者に対して生命予後を改善し、ADL・QOLを大きく改善することができる。一方で、移植後は糖質コルチコイドや免疫抑制剤による糖代謝ならびに骨代謝の悪化などが懸念される。

当施設は国内でも有数の膵臓移植の実施施設として、多くの膵臓移植登録を行っている。移植待機期間は近年短縮傾向にあるが、登録患者は複数の進行した合併症を抱えており、待期期間中も細心の全身管理が重要になる。また、移植後は定期的に耐糖能評価を行っているが、インスリン分泌のパターンは様々であり、日常的に反応性の低血糖を自覚する患者も少なくない。現在、低血糖が合併症の進展ならびに生命予後に大きく影響することが重視されており、移植後に安定した血糖管理が行うための治療法のさらなる改善も望まれる。また移植医療の進歩とともに長期間にわたり移植膵機能を保持できる症例も増加しており、長期予後をみすえた合併症管理の重要性が増している。われわれの施設でも移植後に定期的に末梢神経障害や骨代謝等の観察も行い、併存疾患へのきめ細やかなケアを目指している。今後も膵臓移植に携わる内科医として、長期予後を見据えた内科的管理を行い、エビデンスの構築とともに、1型糖尿病の根治治療となり得る膵臓移植の適応や有用性について、正しく啓発活動を行うことも社会的責任の一つと考えている。

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