移植
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全盲の1型糖尿病患者に対する膵島移植
藤倉 純二穴澤 貴行松山 陽子伊藤 遼中村 聡宏境内 大和波多野 悦朗稲垣 暢也
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2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s26

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抄録

当院では2004年から膵島移植が行われており、我々は当時膵島移植を受けた患者の経過観察から膵島移植の安全性と有効性を報告してきた。

また、2013年以後の先進医療膵島移植においては、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)の副作用対策として投与されるステロイドによる高血糖が、膵島生着の障害となる懸念から、持続インスリン静注を病棟看護師がアルゴリズムに従って操作することで、血糖値を正常に維持できるような術後管理を行うようにした。移植後患者では血糖値に対応する柔軟な膵島内分泌機能により血糖変動が安定することを持続グルコースモニタリング(CGM)により示すことができた。

今日、持続皮下インスリン注入療法(CSII)の進歩は著しいが、高齢者や手指、視聴覚障害を有する患者における利用は困難とされている。当院では、網膜症により全盲に至った1型糖尿病患者に膵島移植を施行する機会があった。移植前後共にペン型のインスリン注射器を用いた頻回注射による古典的な強化インスリン療法をおこなっており、経過を報告したい。

先進医療の有効中止を経て2020年4月に同種死体膵島移植術が新規に保険収載された。高度な血糖管理デバイスを使用できない症例や、それらの利用によっても血糖管理困難な症例は存在し、膵島移植が内科治療と共に発展していくことで、コントロール困難な糖尿病を克服できることが期待される。

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