2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s290
【背景と目的】これまで当科では2010年より生体ドナーの負担軽減を目的に上腹部正中切開アプローチによるハイブリッド肝採取術を導入してきた。これまでの通常開腹と比較し、安全性を含めた短期成績を報告する。
【対象と方法】2021年までに施行した生体肝移植306例中、半年以上経過した301例を対象に開腹群(O,n=141)とハイブリッド群(H,n=160)で周術期成績を比較検討した。
【結果】手術時間(O 420分, H 403分), 出血量(O,670g, H 450g), 術後在院日数 (O 15日,H12日)は、有意にH群で良好であった。術後合併症(Clavien III以上)の発生は、O群 14.1%, H群8.1%であり、H群でやや良好であったが有意差は認めなかった。合併症の症例率を時期で比較すると、1-100例 17%と比較して、101-200例 8.0%, 201-301例 8.9%と有意に低くなっていた。
【結語】生体肝移植ドナーにおけるハイブリッド肝採取術は通常開腹と比較して短期成績良好であり、安全に施行できると思われた。