移植
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完全腹腔鏡下ドナー肝切除の短期成績とそのラーニングカーブ
高原 武志新田 浩幸片桐 弘勝梅邑 晃菅野 将史武田 大樹真壁 健二小島 正之佐々木 章須田 康一
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2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s291

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抄録

(背景)

2002年に小児生体肝移植において完全腹腔鏡下外側区域グラフト採取が施行されて以来、海外を中心に成人生体肝移植において、完全腹腔鏡下左葉グラフト、右葉グラフト採取術が施行されている。

(対象・方法)

今回、完全腹腔鏡下ドナー肝切除のラーニングカーブを検討するうえで、悪性腫瘍に対する腹腔鏡下肝葉切除の症例を比較対象とした。岩手医科大学で2010年から2019年に施行した悪性腫瘍に対する腹腔鏡下肝葉切除症例61例(Group M)と2012年から2020年に施行した完全腹腔鏡下ドナー肝切除48例(Group D)を対象とした。Group MとDをそれぞれ、右葉切除・左葉切除にわけてその短期成績を検討した。

(結果)

左葉切除において、この2群間で合併症の頻度において有意な差はなかった。右葉切除において、悪性腫瘍に対する腹腔鏡下肝右葉切除の導入時期に、いくつかの合併症を経験した。Group Dの平均在院日数は、Group Mと比較して有意に短かった。完全腹腔鏡下左葉グラフト採取術の手術時間は、右葉グラフト採取術と比較して、導入時期と比較して、悪性腫瘍に対する腹腔鏡下肝葉切除の手術時間に近づく傾向にあった。

(考察)

悪性腫瘍に対する腹腔鏡下肝葉切除の充分な経験数をもって、安全に完全腹腔鏡下ドナー肝切除の導入が可能である。完全腹腔鏡下左葉グラフト採取術は、悪性腫瘍に対する腹腔鏡下左葉切除の手術時間に近づく傾向にあり、標準術式として確立される可能性がある。

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