2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s3
当院は、2020年1月まで8件の脳死下臓器提供を行った。これらは全てIntensive Care Unit(以下ICU)とHigh Care Unit(以下HCU)での対応であった。単一部署での一定数の症例経験は、部署内の柔軟性を持つ体制の構築、移植医療に関する知識や倫理観の向上に繋がり、ICU/HCUにおける臓器提供体制は成熟期に入ったと考えられた。
しかし、COVID-19患者の受入れが開始となり、ICUの一部とHCUがCOVID-19専用病棟となった。これに伴いICU/HCU内の法的脳死判定が可能な環境を備える病床をその目的で使用出来なくなり、経験豊富な部署での脳死下臓器提供が事実上困難となった。COVID-19禍の状況変化に伴い院内環境も刻々と変化したが、終末期にある患者とその家族が人生の最期のをどのように迎えるかを決定するに当たり、必要な情報の提供に努め、臓器提供の意思がある場合には適正かつ円滑に対応するべく病院、医師側と共通認識を図り、対応可能病床の選定と病棟環境調査、臓器提供に関する啓発、症例対応ドナーCo人数の見直し等を行った。
現実に、初めて脳死下臓器提供対応する病棟での提供を経験し、病棟スタッフとドナーCoの連携や情報共有、スタッフの心のケアの重要性を再認識した。COVID-19禍における外部医療者の受け入れ、面会制限等が家族に与える影響も課題であり、学びと共に課題と展望につき論じたい。