移植
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わが国において心臓移植と植込型補助人工心臓治療が果たすべき役割を考える
波多野 将
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2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s305

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抄録

我が国における心臓移植は移植後10年生存率が約90%と極めて優れている一方で、1年間当たりの新規待機登録患者数約200人に対して移植実施件数は50~60人と、ドナー不足はますます深刻になっている。この間ほとんどの患者は植込型左室補助人工心臓(LVAD)を装着して待機しているが、今後植込型LVAD装着下での待機期間は6年にも7年にも及ぶことが想定されている。我が国における植込型LVADの治療成績も極めて優れているが、一方で植込型VAD装着後の生存率が劣る基礎疾患もあるし、そもそも植込型LVAD装着に適さない基礎疾患もある。拘束型心筋症や先天性心疾患は植込型LVAD装着後の生存率が拡張型心筋症と比較して劣るとの報告もあるし、不整脈原性右室心筋症などは基本的にはLVAD装着には適さないと考えられる。植込型LVADによるDestination Therapyも始まり、従来のBridge to Transplantationとしての使用以外にも植込型LVAD治療の恩恵に与れる患者が今後ますます増えていくと考えられるが、一方で植込型LVADによる予後の改善を見込むことが難しい患者に対して、いかに適切に心臓移植を受ける機会を提供できるかが大きな問題と思われる。そこで本シンポジウムでは、我が国における心臓移植待機患者の現状をふまえ、日本版の心臓移植におけるallocation systemがどうあるべきかについて議論したい。

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