移植
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LVADだけでは助けられない患者を移植で救う:新しいallocation systemの提言
戸田 宏一吉岡 大輔中本 敬斎藤 哲也河村 拓史樫山 紀之河村 愛松浦 良平久保田 香世良 英子坂田 泰史宮川 繁
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2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s306

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抄録

本邦の心移植は2020年末で566例に達し、移植後10年生存率は90%と良好であるが、ドナー不足のため心移植に至った症例の内3年以上の植込型LVAD補助を要した症例は2018年以降毎年70%を超えている。一方で心移植前提のLVAD-BTT症例数は1100例を超え、primary LVADの2年生存率は91%と海外のどの成績より優れており、移植を前提としない重症心不全治療:LVAD-Destination Therapy (DT)も2021年より保険適応となった。心移植と植込型LVAD治療は末期重症心不全治療の両輪を成すと考えられるが、植込型LVADでは十分治療できないLVAD術後慢性右心不全も少なからず経験される。当院のデータでもかかる症例の植込型LVAD治療成績は不良だが、心移植に到達すれば心移植後の成績は右心不全のない症例同等に良好であった。長期に強心剤や機械的右心補助を要するLVAD症例がLVAD植込み後1年で心移植に到達できると想定すると植込型LVAD単独でサポートできる症例と同等の予後が期待された。一方臨床研究において2つの植込型VADを用いた植込み両心補助を6例経験したが、4例は平均824日(1245 - 553日)で心移植に到達したが、2例は284日、511日で失った。以上より、機械的補助を要するLVAD植込み後慢性右心不全であってもLVAD植込み後1年で心移植が斡旋されるallocation systemが構築されれば、長期機械的右心補助を要するLVAD-BTT症例にも希望の光が差すのではないかと思われる。

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